桃 25歳 Ⅰ

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桜も散り、新入社員達が配属されてくる四月。まだまだ、肌寒いからベージュの春用のコートに身を包み私は出社する。 薄手のカットソーを着ていたって、中身は薄い腹巻を巻いている。 冷え性なんだよね。なのに、見栄っ張りだから厚着ができないんだよ。だから薄手の暖かいインナーに薄手の腹巻。 最近はいいものができたもんだ。 なんて思いながら、まだ冷たい風にくそっと内心で舌打ちをしたくなる。 ガラが悪いのはご勘弁を。 会社では、おとなしく真面目な社員を気取ってみたけれど所詮私はわたし、元来の口の悪さと大雑把さは隠しきれているのかいないのか。 「おはようございます。さくちゃん先輩。今日、上が引き抜いてきた営業さんがうちの課にくるって聞いてます?」 後ろから、声をかけてきたのは、後輩の垣内 美鈴(かきのうち みすず)。これでもかというぐらい化粧をしているにもかかわらず、傍目にはナチュラルに見えるという神業のような技術をもっている。 ちなみに、めちゃくちゃかわいい。が、本人曰く化粧を落とすと別人らしい。 うちの課の一番人気の彼女は、癒し系の上に舌ったらずな話し方でさらに人気を集めているらしい。
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