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「読んだんだ」
「読んだわよ。だから、断りに行くの」
その言葉に、俺は苦笑する。
「毎度のことながら、付き合う気はないんだね……」
「当たり前よっ!」
俺の言葉に、七海は大きな声を出してきた。
それから顔を反らし、ちょっと顔を赤くして、
「……付き合っちゃったりしたら……柘斗のお世話、出来ないじゃない……」
何かを呟いた。
「何だって?」
当然、それは小さすぎて、俺の耳にハッキリ聞こえず、俺は聞き返した。
すると、七海は顔を真っ赤にしてこちらを振り向くと、
「何でもないわよっ! バカ柘斗っ!」
怒鳴られてしまった。
七海はふんっ! と鼻を鳴らしそのまま教室を出ていった。
「素直になれないってのも、難儀だねぇ……」
「……そうだな」
と、彼女の出ていく姿を見ていると、和馬とシズの二人が七海の姿を見ながら、俺の前に来た。
「しかしですよ、静矢さん。俺はそれに気付けない鈍感な奴も悪いと思うんですが、どう思いますかね?」
「……そうだな。素直になれない奴も悪いかもしれないが、鈍感な奴も悪いと思う」
そして、責めるように俺に言ってくる二人。……え? 何これ? 俺、なんかした?
「……まぁ、今に始まったことじゃないけどな」
「……確かに」
そう言うと、二人はようやくこちらに向き、俺に口を開いた。
「よぉ、柘斗。俺ら、これからちょっとゲーセン行くんだけど……、お前も来るか?」
「いや、その前に、なんか話してなかった? 素直になれない奴とか、鈍感な奴とかどうとか」
「そんなの話してたか?」
「……柘斗の気のせいだろう」
いや、明らかに俺の目の前で話していたでしょ……。
俺は心の中でため息をついた。
「で、どうだ? 一緒に行くか?」
和馬の問いに、俺は首を横に振る。
「今日は部活。また、違う日に誘ってよ」
そう言って、俺は教科書等々を入れた鞄(正確にはエナメルバッグだ)を肩から掛ける。
「そうか。じゃあ、明日な」
「……部活、頑張れよ、柘斗」
「うん。じゃあね」
二人に手を振り、俺は教室を出た。
それからしばらく廊下を歩き、
一つの扉の前に来た。
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