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ちょっと歩くと、俺と七海が所属する1年1組の教室に着いた。
中に入り、自分の席に座ろうとしたその時に、
「おっはよー! 柘斗クン!」
そんな声と共に、背中を叩かれた。
あまり痛くなかった。
後ろを向くと、そこには茶髪の少年がいた。
「あ、おはよ。和馬」
俺は背中を叩いきながら挨拶をした少年に、挨拶を返す。
彼は小林和馬(こばやしかずま)。
中学からの付き合いで、親友だ。
中学ではクラスのムードメーカーで、入学して1ヶ月も経ってないのに、彼はこのクラスのムードメーカーになっていた。
端正の整った顔のなかなかのイケメンなのだが、女子にはモテない。
その理由は、
「いやー、魔女制度始まったねぇ。もし、運が良くて勝てれたら、毎日、ムフフなことするんだけどねぇ」
……言動がとてもイケメン男子のものじゃないからだよ……。
これさえなければ、今頃、女子にモテモテなのにねー。
ちなみに、このクラスの女子は全員、彼の性格を分かっている。
「いやいや。運が良くても、魔女には勝てないでしょ。魔女制度が始まる前だって、魔女は普通に男性能力者よりも強かった訳だし」
今朝も幼馴染みに雷くらったし、とまで言おうとしたが、すでに席に着いていた七海にギロリと睨まれていたので、言うのを止めた。
「じゃあ、勝てねぇのかー。ふー、やれやれ。魔女、下僕に欲しいんだけどな」
「……ちなみに、魔女を下僕に出来たら、和馬は何するの?」
「決まってんじゃん。毎日、ムフフパラダイスだよっ!」
ふはははっ! と笑う彼に、
「……キモっ」
七海がボソッと呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
「キモい? この、俺がっ!?」
どうやら、和馬も聞き逃さなかったらしい。
ズンズン、足音を鳴らし、七海の席に近付く和馬。
「来ないでよ。……気持ち悪い」
「ボソッと呟くの止めてくんない!? 地味に傷付くから!」
「気持ち悪いわっ!」
「だからって、大声で言うんじゃねぇ!! どっちにしろ、俺、傷付くから!」
ギャーギャー叫ぶ二人。
それを苦笑しながら見ていると、
「……賑やかだな」
また、後ろから、声が聞こえた。
先程の和馬ほどの、声の大きさではなかった。寧ろ、普通の人より小さかった。
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