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「……菊門寺夏蓮だ」
前で七海と叫び合いをしていた和馬が呟き、後ろにいた菊門寺さんを見る。そして、七海としていた叫び合いを止めて、俺とシズの方に来た。
「いやぁー……、今日も美しいねぇ、彼女」
うっとりしたような目で彼女を見る和馬。
「なぁ? そうは思わないか!? 二人とも!」
そして、俺とシズの方に顔を向け、そう聞いてくる。
そんな彼の問いに、シズは厳つい顔のまま、腕を組み、口を開く。
「……確かに綺麗だが、興味はない」
「あー……、そうだったな。お前には妹ちゃんがいるもんな」
はぁ、とため息をついたと思うと、急にこちらを向いてきた。
「柘斗はどうだ!?」
「え? どうだって……」
急にそんなことを聞かれても困る。
「……」
なんて答えよう? と周りを見回しながら考えていると、前の席に座る七海がいつの間にかこちらに向いており、何故か切なそうな顔をしていた。
「?」
「……っ!」
目が合うと、七海はあわてて顔を反らした。
何で反らすんだろう? 俺には理解出来なかった。
「……と言うかさ、本人にそう言えばいいじゃん。もしかしたら、菊門寺さん、和馬に惚れるかもよ?」
と言う俺の意見に、和馬は、
「い、言える訳ないだろっ!」
真っ赤な顔で、そう言ってきた。
「だってさぁ? 面と向かって言ったらさぁ? その……恥ずかしいじゃん?」
両手の人差し指をツンツンさせながら、俺に言ってくる和馬。
彼、意外に純情です。
「……いつものテンションはどうした?」
と、これはシズ。
「び、美人を前にすると……いつものテンションで行けなくて……」
そうなのだ。
彼は普段、おちゃらけていたり、ふざけていたりするが、美人を前にすると、まるで蛇ににらまれた蛙の如く、大人しくなるのだ。
前も、俺とシズを誘い、
「女の子、ナンパしようぜ?」
……なんて言いながら、出来なかった。
まぁ、今更なんだけどね。
「ねーねー、菊門寺さん。英語の宿題って、終わった?」
その時、クラスメートの女子が菊門寺さんに、近付き、そう聞いていた。
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