出会い

7/32
前へ
/220ページ
次へ
「……菊門寺夏蓮だ」 前で七海と叫び合いをしていた和馬が呟き、後ろにいた菊門寺さんを見る。そして、七海としていた叫び合いを止めて、俺とシズの方に来た。 「いやぁー……、今日も美しいねぇ、彼女」 うっとりしたような目で彼女を見る和馬。 「なぁ? そうは思わないか!? 二人とも!」 そして、俺とシズの方に顔を向け、そう聞いてくる。 そんな彼の問いに、シズは厳つい顔のまま、腕を組み、口を開く。 「……確かに綺麗だが、興味はない」 「あー……、そうだったな。お前には妹ちゃんがいるもんな」 はぁ、とため息をついたと思うと、急にこちらを向いてきた。 「柘斗はどうだ!?」 「え? どうだって……」 急にそんなことを聞かれても困る。 「……」 なんて答えよう? と周りを見回しながら考えていると、前の席に座る七海がいつの間にかこちらに向いており、何故か切なそうな顔をしていた。 「?」 「……っ!」 目が合うと、七海はあわてて顔を反らした。 何で反らすんだろう? 俺には理解出来なかった。 「……と言うかさ、本人にそう言えばいいじゃん。もしかしたら、菊門寺さん、和馬に惚れるかもよ?」 と言う俺の意見に、和馬は、 「い、言える訳ないだろっ!」 真っ赤な顔で、そう言ってきた。 「だってさぁ? 面と向かって言ったらさぁ? その……恥ずかしいじゃん?」 両手の人差し指をツンツンさせながら、俺に言ってくる和馬。 彼、意外に純情です。 「……いつものテンションはどうした?」 と、これはシズ。 「び、美人を前にすると……いつものテンションで行けなくて……」 そうなのだ。 彼は普段、おちゃらけていたり、ふざけていたりするが、美人を前にすると、まるで蛇ににらまれた蛙の如く、大人しくなるのだ。 前も、俺とシズを誘い、 「女の子、ナンパしようぜ?」 ……なんて言いながら、出来なかった。 まぁ、今更なんだけどね。 「ねーねー、菊門寺さん。英語の宿題って、終わった?」 その時、クラスメートの女子が菊門寺さんに、近付き、そう聞いていた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加