-ささやき-(1)

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眠気と戦う5時間目の世界史。 となりから聞こえたヒソヒソ声に、下ろしかけていたまぶたを上げた。 「ミオ~。消しゴム貸してー」 「も~。はい」 差し出された友だちの手に、 私はひょいっと自分の消しゴムを置く。 せっかく貸してあげたのに、 返ってくる時には、 ニヤニヤのおまけつきだった。 「何これ、においつき消しゴム? なつかし~」 はいはい、どうせ子どもっぽいですよ。 好きなんだからいいじゃない。いちごの消しゴム。 「じゃあもう貸さない」 「え~っ、ウソウソ、ごめ~ん!」 「ふ~んだ」 そこに、教卓から怒声が飛んでくる。 「こら! 柳瀬(ヤナセ)! 牧原(マキハラ)! なにをしゃべってる!」 「ご、ごめんなさーい!」   ◇  ◆  ◇  ◆  ◇
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