-ささやき-(1)

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授業が終わり、私は大きな伸びをした。 「あ~あ、最後、体育か~。かったるいなぁ~」 友だちの牧原千奈(チナ)が、 2つ前の席あたりまで転がっていた自分の消しゴムを拾いながら 答える。 「またそんなだるそうに…。いい若いモンが」 「なにそれ、オバチャンかー」 「ダイエットだと思えばいいでしょ。ほら、着替えるよ」 「は~い…」 私より細い千奈にそんなこと言われたら、何も返せない。 私、柳瀬 澪(ミオ)は、 ごくごく平凡な女子高生。 頭がいいわけでもない、 スタイルがいいわけでもない、 ときどき子どもっぽいとからかわれる、 そんなありふれたキャラ。 唯一の自慢といえば、背中まで伸ばした黒髪だろうか。 それくらい。 「ほら、ミオ、あれ」 体育館へ行く途中、 千奈が指差したのは、 2階の廊下の窓から外を見ている一人の男子生徒だった。
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