512人が本棚に入れています
本棚に追加
授業が終わり、私は大きな伸びをした。
「あ~あ、最後、体育か~。かったるいなぁ~」
友だちの牧原千奈(チナ)が、
2つ前の席あたりまで転がっていた自分の消しゴムを拾いながら
答える。
「またそんなだるそうに…。いい若いモンが」
「なにそれ、オバチャンかー」
「ダイエットだと思えばいいでしょ。ほら、着替えるよ」
「は~い…」
私より細い千奈にそんなこと言われたら、何も返せない。
私、柳瀬 澪(ミオ)は、
ごくごく平凡な女子高生。
頭がいいわけでもない、
スタイルがいいわけでもない、
ときどき子どもっぽいとからかわれる、
そんなありふれたキャラ。
唯一の自慢といえば、背中まで伸ばした黒髪だろうか。
それくらい。
「ほら、ミオ、あれ」
体育館へ行く途中、
千奈が指差したのは、
2階の廊下の窓から外を見ている一人の男子生徒だった。
最初のコメントを投稿しよう!