-ささやき-(1)

4/9
前へ
/184ページ
次へ
(う…。…スイくん) 私は瞬間、胸がつまる。 「相変わらずアンニュイに外見てるね~。深窓の王子様」 「う、うん…」 3組の 早稲生 水(ワセオ スイ) といえば、 2年生で知らない子はいないほどの有名人だ。 高嶺の花、というやつか。 いくら中学から知っているとはいえ、顔見知り程度。 こんな私が好きになる相手としては、理想が高すぎる。 それでも、好きなものは、どうしても…。 「おーい、わせおっち~」 「ええっ! あ…」 千奈が呼びながら大きく手を振ると、 スイくんも小さく手を振り返してくれた。 ちゃっかり私も手を振ってみる。 不意なことに心臓が暴れている。 カチカチになっている私に、千奈がケラケラ笑いながら抱きついた。 「あっははは。かわいーねえミオは」 千奈から犬のように頭をわしゃわしゃされて、 ようやく緊張がおさまる。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

512人が本棚に入れています
本棚に追加