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それは、
ある一言が原因だった。
『柳瀬の女』
あの人は私のことを、
そう呼んだ。
それは、あの、
着物を着た契約の悪魔と
同じ呼ばれ方だったのだ。
そしてこの
『ロミオとジュリエット』……。
あの人は……
いったい……。
(頭イタ……)
混乱のせいなのか、
変な頭痛がする。
腕の『印』も
チリチリ痛む。
あのときの悪魔の、
酷薄な笑みが頭をよぎり、
私は小さく頭を振った。
(あの人と…
あの悪魔は…
何か関係が…………?)
ぐるぐると渦巻く疑問の中、
私はボーっとしていたんだろう。
千奈が呼ぶ声を、
聞き逃していた。
「ミオ? おーい、ミオ~」
「……」
「聞こえてるか~い? 柳瀬澪さーん」
「……え!」
「うわ、びっくりした!」
突然、顔を上げてしまった。
(あれ…? なんだろう……これ……)
ふいに頭をよぎった
違和感。
きっと生まれて初めてってくらい、頭がフル回転していた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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