512人が本棚に入れています
本棚に追加
スイくんの背中は窓の向こうへと消えた。
「う~ん……あいつ顔はキレイだと思うけどさ、無愛想だよね~。なんでみんなあんなのがいいんだか」
「そりゃあ…千奈は筋肉フェチだし…。もう、痛いってば」
もう四年くらい片思いなんだから、
我ながらけなげだなあと思う。
その日の放課後。
「おい、ミオ」
突然の声に、肩がビクッとあがった。
もう聞くだけでわかる。
ふりかえるとスイくんがいた。
「ス、スイくん」
「ミオ、ちょっといいか」
私たちの中学では、
みんな下の名前で呼ぶのが普通だったから、
高校でもそれが続いている。
こんなささやかなことだけど、他の子に比べて親しい気分になれるのが、
うれしかったりする。
背が高いスイくんは、低めな私の身長に合わせて
少しあごを下げて、しゃべりかけてきた。
「なあ、こんどの同窓会、おまえ行くか?」
最初のコメントを投稿しよう!