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「あぁ……」
都立高校に通う、藤原満(みつる)は、がくっと首を垂らし、力なく呻く。彼は陰鬱な気分で近所の商店街を歩いている。
商店街といっても、潰れかけの電器店や、営業しているのかどうかわからない居酒屋などばかりで、まるで活気がない。
「……なんであんなやつが……」
蚊の鳴くような声でぶつぶつ言いながら、活気のない商店街を歩く。
「満ぅー!」
その甲高い声は、満がこれまで歩いてきた道を走り抜け、彼の耳に届いた。
「下ばっか向いて歩いてると、すぐじいさんになっちまうぜー!」
満が振り向くと、そこには同級生の竹中卓司(たくし)が手を振りながら走って来ている。
「………。そうかい……」
満はぶっきらぼうに答える。彼が先ほど呟いた、あんなやつ、とは、卓司のことである。
「なんだよ暗いなー!だから彼女できないんだぜー?」
卓司はそう言う間に、満に追い付いた。
「余計なお世話だ……!お前なんて声変わりしてるかしてないか、わからんくせに!」
満はムッとした表情を卓司に向け、彼の甲高い声にけちをつける。
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