13人が本棚に入れています
本棚に追加
満は、卓司と別れた後、家に向かって歩いていた。
気分は重く、決して足取りは軽いとは言えない。
気分が重くなったのは卓司のせいだ、そう内心に呟く。
卓司は、昔から自分の思ったこと、考えていることを良く見抜く。
そのお陰で、助かった場面もあるが、大体は知られるとまずいことばかりだった。
今回も、それだった。
何故バレた?常盤さんを見ていたからかな?
そんなことを考えながら歩いていたが、考えていても仕方ないことだと思い、歩くことに集中した。
特に特徴のない細い路地。
両脇にはブロック塀が無機質に満を見下ろしている。
野良猫が塀の上を歩き、退屈そうに体を伸ばす。
そんな光景を視界の端に捉えながら、うつむき加減に歩く。
高校生であろうカップルが自転車に二人乗りして満の脇を通り抜けていく。
二人は、楽しそうに喋りながら、満のことなど全く気にせずに走り去っていく。
満はそれを何か嫌な物を見る目で見る。
「リア充め……!爆発しやがれ……」
誰にも聞こえないような小さな声だったが、満にはそれで充分だった。
とにかく、この不満を外に吐き出さなければ、自分がどうにかなってしまいそうだった。
最初のコメントを投稿しよう!