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しばらく歩いて、十字路の角に位置するアパートの101号室へ、鍵を開けて入る。
「ただいま……」
狭い玄関に低く響く。
誰も居ないのにそう言うのは、満なりの寂しさを紛らわさせる方法である。
靴を乱暴に脱ぎ捨てる。学生カバンを玄関脇に放り投げ、Yシャツを脱ぎながら洗濯機へ歩いて行き、それを放り込む。
満は、とある理由で大学生の兄と二人暮らしをしている。
といっても、兄の藤原直幸(ふじはら なおゆき)は、中々帰ってこない。
そのため、満はほとんど独り暮らしの状態でこの1DKの部屋に住んでいる。
生活費は、遠方にいる両親が出してくれている。
「はぁ……」
一つ大きなため息をつき、満は何となく部屋を見回す。
小さめの電球が天井からぶら下がり、弱くなった光を放っている。
台所と居間を隔てるふすまに立て掛けられた小さな丸いテーブル。
テレビは、大分前に兄が壊して、使い物にならない。
しかし、それは今も昔と変わらない位置にあり、他のものとは少し違う存在感を放っていた。
やることもないので、満は畳の上に寝転がり、目をつぶった。
満は、いつの間にか眠ってしまった。
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