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「──酒呑さま。またひとつ、魂が逝きます」
闇を見つめ、千尋はぽつりと呟いた。餓鬼に憑かれたまま、堕ちていく。
「……地上はまったく愚かな者ばかりだな。自ら命を絶っても、救われることなどない。擦り切れて消滅するまで冥府の焔に焼かれるだけだというのに」
見つめる酒呑の瞳に感情の揺らぎはない。手にしたグラスの中味を揺らすだけ。
そばの千尋の憧憬の眼差しに気付き、ようやく酒呑は温度を感じられる笑みをこぼした。
「人間どもの混沌を浄う血の禊ぎを、そろそろ始めるとするか」
酒呑の拳が握られ、グラスがパンと砕ける。
指の間からこぼれ、流れたのは──人の血だった。
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