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魁斗は、鬼が死にゆく時その声がかすかに聞こえるという。
井上さんは、何と言い遺したのだろう──。
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「……寝た女を殺すところまで行っといて──あの男が、最後は何でお前に縋ろうとしたかわかるか?」
頃合いを見て、魁斗は美月に訊ねた。
隆が消えたあの日から2週間。美月は自分の部屋をそのままに、簡単に荷物をまとめて魁斗の部屋に身を寄せていた。
隆が消えたあの部屋で寝起きすることは、恐ろしくてもうできない。美月は季節の雨が降り続ける窓の外を見ては溜め息をついたり涙を浮かべたり、落ち着かない様子だった。
若い夫婦が非業の死を遂げたことが、彼女には重くのしかかっていたのだ。
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