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「何よ……何なのよ!!」
自分の体に流れる血が凍り付いていくような恐怖にさらされながら、美月はさっき成美の言っていたことを思い出した。
『最近この辺りに物騒な事件増えたじゃん、国文科のシロクマ、鬼の仕業だーって必死に言って回ってるんだよ』
まばたきを忘れ、美月は目の前の狂気の生物から目を離せなかった。ここで暴れる小さな異形の化け物は、“鬼”と呼ぶのにふさわしい。
黒ずんだ肌に、真っ赤な瞳、裂けた口から覗くのは鮫を思わせる糸鋸のような牙の列び、体は痩せこけて下腹だけが肥大し、鋭い鉤爪。
昔話に出てくる小鬼の特徴そのままだ。
何より、今にも剥がれ落ちそうな薄い頭皮から、1本の角がしっかりと突き出していた。
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