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……。
……。
……?
どのくらいそうして耐えただろうか。
美月が覚悟した痛みや衝撃はなく、我に返った時そこにあるのは嘘のような静寂だった。
は、と止めていた息が思わず口から漏れる。
その時ミシリ、とガラスが外れる音がした。
「……そこの猫ちゃん、平気? 生きてる?」
武田の声ではない。聞き覚えのない、低い声。美月は瞼を押し上げながら、おそるおそる振り向いた。
「お、平気だな。……彼氏、気絶しちゃってるけど」
フロントから、男が直接中を覗き込んでいる。
薄暗い半地下駐車場の非常灯が逆光になってよく見えないが、小鬼が姿を変えたのでなければちゃんと人間であるらしいことは美月にもわかった。
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