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さらさらと頬に影を落とす、赤みのはしった長めの髪。高瀬や武田よりも背が高い。
逆光で美月に今わかるのは、そんなところだった。
「ひとりで立てる?」
そっと腕を離され、代わりに乱れていた髪をパサパサと直された。特に優しくもないその仕草に、美月は何故だか涙が出そうになる。
「……あんた……」
気付くと、まじまじと顔を覗き込まれていた。
「いやー……偶然とはいえ、縁なのか」
「何のこと……? って言うか、さっきのはどうしたの?」
「……ああ、餓鬼なら俺が」
男はデニムのポケットから鞘に納められた短刀を出して美月に見せると、軽く刺す真似をした。
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