1 再会

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   今美月の目の前で気まずそうに微笑む男は、自力で動けなくなっていた彼女を救ったその人なのだ。長らく薄らいでいた記憶だったが、その瞬間のことだけが鮮明になる。 「あなた……あの時、の」  おぞましい記憶と安堵が入り交じり、美月の喉が激しく渇いた。  ──彼だ。彼から、桜の香りがする── 「今日で、あんたを助けたのは二度目……妙な縁だな。俺は八神魁斗(やがみ かいと)。あんたは?」 「……逢坂……美月」  ぱちんと、胸の中で何かが弾けたのがわかった。  それは、季節の訪れを桜の香りで知るような──昂揚と、衝動。 .
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