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「アルト。お前ぇ、もっと強くなりたくねぇか?」
「な…に…?」
朱雀の言葉に、アルトは声を小さくして呟いた。
予想外の言葉に、アルト自身戸惑いを隠せていない。
「近いうちにデカい戦争が起こるだろう。
その標的となるのは、おそらくお前ぇが暮らすウェクスト王国だ。
そして、現状ではウェクスト王国に勝ち目はない」
「戦争だ?今のガーランドの国々の力は均衡している!
それに仮に抜き出た国が現れようが、ウェクスト王国には七聖騎士の第二位と、炎帝がいる!」
アルトの言葉は正しい。
七聖騎士の第二位、『竜王の覇者』ゼクト・ジェンス。
『炎帝』と呼ばれる魔導師、クロード・ベルフォール。
この二人がいる以上、ウェクスト王国にはそうそう敵はいない。
「確かにあの二人はそれなりに強い。だが、攻めて来る国はそれを遥かに超える戦力をぶつけてくるだろう」
「何でテメェにそんなことが分かる!」
「分かるさ。信じる信じないはテメェの自由だがな」
朱雀の言葉に、アルトは言葉を濁した。
信じる信じないにせよ、自分の国のことだ。
他人事ではないだけに、安易な答えは返せない。
「仮に」
「あん?」
「仮にその話が本当だとして、テメェは俺をどうしたいんだ」
アルトの言葉を待っていたかのように、朱雀はニヤリと笑みを浮かべた。
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