次なる舞台へ

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「う…」 小さくうめき声を上げるアルト。 目を開けると、そこは見知らぬ部屋だった。 白い天井に、多く置かれた観葉植物。 部屋にはテーブルやらソファやらが置いてある。 「ここは…?」 アルトは周囲を見渡しながら、ゆっくりと過去を思い返した。 「そうだ!煉獄の獅子!」 そう。 アルトが戦っていた四聖獣、煉獄の獅子フォルティス。 彼の一撃により、アルトは腹部を貫かれ、瀕死状態だった。 慌てて腹部を見てみると、包帯が巻いており、痛みもあまりない。 「あれだけの傷が…ない?」 小さく呟くアルト。 その時、部屋の扉が開いた。 「よぉ、目ぇ覚めたか」 その声にアルトは目を見開いた。 顔を見ずとも、相手が誰だかわかった。 そして、ゆっくりと視線を向ける。 すると、そこには朱雀が立っていた。 「お…親父…?」 「へぇ、俺のこと覚えてやがったか」 朱雀の言葉に、アルトはバッと布団から出る。 「忘れるかよ!!てめぇら両親のおかげで俺は死ぬ思いでここまで生きてきた!! てめぇだけは忘れねぇぞ」 「そりゃ、親としては光栄だねぇ」 「なめてんじゃねぇぞ!!」 アルトは勢いよく右手を突き出す。 それは間違いなく魔法を放つ戦闘態勢だった。 何事にも冷めているアルトが、感情をむき出しにしている。 その光景はあまりにもめずらしかった。 「まぁ落ち着けや、バカ息子」 朱雀は一瞬でアルトの目の前に現れ、右手を抑え込む。 「くっ!」 全く動かない右手。 いや、それどころか全身も動かない。 圧倒的な気で抑え込まれている。 これが闘神、朱雀。 アルトの実父にあたる男だ。
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