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教室に入ると一直線に自分の席へ向かった。
私は、企画書を机に置き内容を眺めた。
クラスがざわつく。
「おい。中村ゆりなだ。珍しいな。朝から来るなんて。」
「ああ。いつもは途中から来るのにな。」
特待生の登校時間は自由。
必要な単位は全て取っているが高校卒業資格の問題で在籍しなくてはならないという契約書を入学時に書かされるのだ。
Aの5の生徒はほとんど登校せず、問題になりつつある。
「おはようございます。ゆりなさん。今日はお早いですね。」
クラスメイトの1人が話しかけてきた。
どうせ親に中村財閥の方とは仲良くしなさいなどと言われたのだろう。
「ええ。」
目を合わせずに言った。
私は、幼い頃から中村財閥の子として扱われてきた。だから、友達はあまりいなかった。話しかけてくる子は親から指示されている子ばかり。
友達など多ければいいという問題でもないだろう。
企画書に目を通しながら私は転入生の事について考えていた。
転入生とは田中財閥の子息らしい。
田中財閥とは、中村財閥とも一部提携している有名な一族だ。
どんな人なんだろう。
そんな事を考えているとベルが鳴った。
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