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「隣座っていい?」
声がした方へ振り向くとそこには、田中勇樹が立っていた。
まさかここで会うとは思わず、言葉につまり1回コクリと頷いた。
そして田中勇樹は私の隣に座った。
「俺今日お弁当忘れちゃってさ。財布も持ってないし。どうしようかなって歩いてたら丁度ゆりがいてさ。」
ゆり。
なぜこの男は私の名前を初対面なのにそのように呼ぶのだろう。
「それは転入初日に災難だったわね。よかったら私のサンドイッチあげましょうか?シェフがいつも多めに作ってくれるの。」
「いいのか?ありがとう。恩に着るよ。」
「いいよ。はい。」
田中勇樹はサンドイッチを受け取り、それからしばらく話をすることになった。
「なあ、お前っていつもそんな感じなのか。誰も寄せ付けないで1人でいる。」
「私に近づいて来る人は大体媚を売るのよ。それが嫌なの。私を1人の人間として見てくれる人は少ないわ。」
「ああ、それはすごく分かる。しかもここにはお坊っちゃまやお嬢様しかいないしな。」
「でも私達もお坊っちゃまとお嬢様でしょう。おかしな人。」
そう言うと田中勇樹は確かにと言った表情でお互い微笑んだ。
どうしてだろうか。
この男と話してると楽だ。
素直に自分が出せている。
「この学園には慣れそう?」
「わからない。でも多分、ここにいても視野は広がらないな。」
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