第一章 偶々に。

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ザァーー…… 雨の音を聞き、私は今まで読んでいた本から視線を外した。 外を見てみると、どんどんと水滴が付着し、窓ガラスを濡らしていた。 雨か……さっきまで晴れていたのに……。 私は少しばかり憂鬱になりながらも、読書を再開させた。 少しして、今読んでいる本を読みおわり、また窓の外を見てみると、雨は先程と変わらぬどころか、むしろ更に激しくなっていた。 今日は傘持ってきてないし…弱まるまでここに居よう。 私が今いる場所は、大学の図書館である。今日の講義で出た課題をするために、ここに来ていた。 図書館は新館と旧館に別れていて、旧館は少し古い書物などが置かれており、今は殆ど使われていないそうだ。 私は読み終えた本を元の場所に戻し、これからどうしようか、と考えた。 雨だからか、意外と図書館に留まっている人が多く、何だか落ち着かなくなってきた。 私は人が多いところは苦手なので、取り敢えず新館から離れる事にした。 まだ入学して2ヶ月程なので、大学内をよく知らない私は、何となく旧館の方に行ってみた。 新館よりも一回り程小さな、古い建物が見えた。西洋風の、明治時代の時の様な味わいのある建物。 私はその外観に何故だか惹かれ、暫くの間、ぼーっと旧館を見ていた。 充分にそれを堪能してから、私は旧館の中へ入っていった。 ギギ…… 扉を開ける際に、そんな音がして、本当に古いんだなぁ、と改めて思った。 中に入ると管理人は不在の様で、 ご用があれば此方へ と書いてある紙と、電話のみが、カウンターに置いてあった。
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