第一章 偶々に。

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宿直って……警備員さんでもいるのかな? 私は宿直と書かれている扉とは別の方の扉をみた。 読書…? 不思議に思いながらも、取り敢えず開けて入ってみた。 これって不法侵入になるのかな? なんて考えながら。 中に入ってみると、そこには沢山の本と、机と椅子。そして─── すやすやと机の上で寝ている男の人の姿があった。 まさか人がいるとは……。 私は内心びっくりしながらも、取り敢えず、部屋の中の本を物色し始めた。 昔から本は好きなので、面白そうなものはないかと本を手に取る。 下にある本は、埃まみれで触り辛かったが、この部屋にある本は比較的綺麗なものが多かった。 幾つかの本を手に取り、ぱらぱらと見ていると、 ギッ…… 机が動く音がした。 反射的に振り返ると、先程まで寝ていた人が、起き上がっていた。 その人は、寝起きだからか、暫くぼーっとしていた。 不意に、バチッと目が合った。 「………誰?」 不思議そうな声。 その人は首を傾げてそう言った。 「どうも。」 取り敢えず挨拶?しておく。 「……どーも。」 男の人も返事を返してくれた。 ………… 沈黙が場を包む。 「で?……誰?」 男の人が再びそう言った。 「あ、私……心理学部の一年で、和野(ワノ)しずくと言います。」 多分先輩だろうから、お辞儀しておく。 「あー……俺は、情報工学部の二年で、相上(アイウエ)涙(ルイ)って名前。」 男の人──基、相上先輩がダルそうにそう言った。 「相上先輩、と読んでも良いですか?」 私は許可も無しに名前を呼ばれるのがあまり好きではないので、相手にも確認を取る。 「……涙、でいーよ。相上って言いにくいでしょ?」 「では、お言葉に甘えて……。涙先輩は、此処で何してたんですか?」 「寝てた。」 スパッと、先輩は即答で答えた。 「此処って、なんの部屋なんですか?」 「サークルの部室。」 又もや即答。 でも、簡潔に答えてくれる人は好きである。 「サークルって…」 「扉に書いてあるよ。 読書サークル って。」 先輩はそう言って、扉を指差した。その指に従って扉を見てみると、表の字よりはっきりとした字で、 読書サークル と、書いてあった。
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