第一章 偶々に。

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「で?えーっと……」 「しずくで構いませんよ。」 「じゃあ、遠慮なく。しずくは、何で此処にいるの?」 それもそうだ。 先輩からしたら、こんな見つかりにくい部室に、なんで見知らぬ女が居るんだ?って感じだろう。 私は先輩に此処に着いた経緯を話した。 「ふ~ん…。」 先輩は生返事を返して来た。興味ないですか、やっぱり。 「ところで先輩。」 私がそう聞けば、 「なんだい後輩。」 と、返してくれた。 案外ノリの良い人だ。 「読書サークルってまんまの意味ですか?」 「うん。読書する為の集まり。」 まんまだ。 「先輩、1人ですか?」 「うん。他は名前だけ貸してくれてる幽霊部員。」 成る程。 と、言うことは…このサークルは人が殆ど居ない上に、好きなだけ本が読める、と。 最高じゃないか。 よし、入ろう。 「先輩、私、読書サークル入ります。」 「中々に急だね。新入部員は歓迎するけど。」 歓迎してくれるんだ。 「好きな時に来ていいんですか?」 「うん。好きな時に来て、好きな事して、好きな時に帰る。規則は、本と旧館を大切に扱うこと。それだけ。分かった?」 「はい。分かりました。」 基本的に自由ってことですね。私が頷くと、 「これからよろしく。」 先輩がそう言って、小さく笑った気がした。 「よろしくお願いします。」 偶々に 出会ったけれど 此処からの時間が きっと一番 楽しかった ……
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