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教室のそと、廊下に出てみると探すまでもなく沙羅はそこにいた。
恐らく俺と比嘉が話していたのを聞いていたのだろう。教室側の壁にもたれかかっていた。
「沙羅、探してたんだ。」
自然とさっきとの声色が変わるのに気づいた。まず男女で声を変えていることに驚く。
「ええ、知っているわ。」
何かバツの悪いといった様子で俯いているようにも見える。聞かれたくない話をしていたわけではないんだけど。
「うん、紗季も待ってるし帰ろ。」
できるだけ“気にしていない風”にしている声が益々さっきとはかけ離れていて正直自分が気持ち悪い。
それほど遠くない自分の教室まで歩き行く。
教室に戻ると、 紗季は二人に囲まれていた。
「お待たせー、先輩に変なこと言われなかった?」
「あっ、ひとぎきの悪い!質問攻めにしただけさ。」
と楢崎。さすが新聞部。悪いけど。
「でもやっぱりかわいい子ね。じゃあね、紗季ちゃん。」
三上も気に入ってくれていたようで。
「それじゃあ紗季、帰ろう。また明日。」
二人にもまた明日溜まるであろうレシートにも挨拶を済ませ、教室を出る。
この三人で帰ることが日課になりつつあった。
「紗季ったらこんなに顔を真っ赤にして。あの二人に何かからかわれた?」
俺も気になっていたけど、可愛がられたのだろうと思っていた。
「でも、仲良くなってて嬉しいよ。」
「うう、はい。楽しかったです…。」
真っ赤にした顔をかばんで隠しながら進む彼女を見ると危なっかしくて
自然と肩に手を添えていた。そしてそれは沙羅も同じだった。
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