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結論から言えば、ここに沙羅は居なかった。 ちょうど入れ違いになったのか、手近なクラスメイトに聞いてみることにする。 「比嘉、ちょっといい?」 たまたま目に付いたのが元同僚、とでもいうべき人物だった。 「ん?おお桂、久しぶりだな。」 おそらく今部活中であろうに、なぜここにいるのか。 机の上を覗くとそれはすぐにわかった。 「また課題に追われてる…。」 2枚ほどのプリントに筆記用具、けれど格好は運動部のそれだった。 「部活に行くときに止められてよ、なんで俺だけ。」 ぶつぶつ呟くも、それは仕方ないことじゃないか、とこころのなかでは思ってしまうのが俺の知っている比嘉だ。 「あー、でもこれ提出日過ぎてたんだろ?」 わざわざ先生が県選抜常連のこいつに勉強させるはずがない。ということは結構やばいんだ。 「祐介にはお見通しか…。これ先週の。」 ぱらぱらと机に落とした白紙のプリントになぜかドキりとする。 「なんで、こんなに…。」   「帰ってからやろう、って思ってもやっぱ寝ちゃうよな~。」 あくびをしながら再びプリントを広げた。 「おうおう、期待されてんだから答えなきゃ。」 期待、か…。 自分で言いつつもこれほど嫌な言われ方はないだろうな。 「まあ、お前もその一人だったろ。」 そうなのかもしれないが、今は違う。 結局自分の足が、ついていけなくなったことは事実だ。
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