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あれは、夕暮れに染まるある日の放課後のことだった。 ここ、教室は静まり還り俺ともう一人が。いつもと変わらない場所に、異なる雰囲気。 もうすぐ17時を回る時計の静かな音だけが響いていた。 「――好きです。好きなんです。付き合ってくださいッ。」 そんな中、頬を赤く染め恥ずかしそうに彼女は口を開いた。 このちっさい女の子は、俺の後輩――白木紗季――。 真っ直ぐ肩まで伸びた綺麗な黒髪な彼女。 そう俺と彼女は高校の先輩、後輩の関係。 中間テストが終わり何ともいえない焦燥感(言ってしまえば絶望)に追われていたあの夏の日、俺は告白された。 出会ってからのことを思い出すと彼女を支えていきたい、手助けしたい、そう思っていた。 「うん。一緒にいような。」 考える間もなく、そう一言。 彼女の幸せのためならばと。 とは言え、これは自分を犠牲にしているわけではない。 寧ろ俺自身望んだこと。 その返答をきくなり彼女の表情はパッと明るくなった。 ただ言葉にできないらしく、とにかく笑顔だったのを覚えている。
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