14人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは、夕暮れに染まるある日の放課後のことだった。
ここ、教室は静まり還り俺ともう一人が。いつもと変わらない場所に、異なる雰囲気。
もうすぐ17時を回る時計の静かな音だけが響いていた。
「――好きです。好きなんです。付き合ってくださいッ。」
そんな中、頬を赤く染め恥ずかしそうに彼女は口を開いた。
このちっさい女の子は、俺の後輩――白木紗季――。
真っ直ぐ肩まで伸びた綺麗な黒髪な彼女。
そう俺と彼女は高校の先輩、後輩の関係。
中間テストが終わり何ともいえない焦燥感(言ってしまえば絶望)に追われていたあの夏の日、俺は告白された。
出会ってからのことを思い出すと彼女を支えていきたい、手助けしたい、そう思っていた。
「うん。一緒にいような。」
考える間もなく、そう一言。
彼女の幸せのためならばと。
とは言え、これは自分を犠牲にしているわけではない。
寧ろ俺自身望んだこと。
その返答をきくなり彼女の表情はパッと明るくなった。
ただ言葉にできないらしく、とにかく笑顔だったのを覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!