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◇◇◇
「これ、すっげぇ苦い」
祐輔が顔をしかめながら言った。
「当たり前だ。ゴーヤだから」
流来は旨そうにそれにかぶり付いた。
厚めのミートパティの上にゴーヤと卵。和風だれとマヨネーズで味付けしてある。かじってみると、複雑な苦味と仄かな甘味が舌を包んだ。
祐輔が、「友達の紹介で会った女の子が、意地悪で執念深かった……みたいな味だな」と言うと流来は、「何だそれ」とバカにしたように言った。そして、再びハンバーガーにかぶりつくと飲み込んでから言葉を続ける。
「意地悪で執念深い女って、けっこう病み付きになるもんなんだ」
「へえー。爽ちゃんってそういうタイプだったの」
「お前な、俺の彼女とゴーヤを一緒にするな。爽はイチゴパフェだ」
祐輔は、爽のえくぼ顔とパフェを重ねてみる。
「あれはイチゴパフェじゃないだろ。どう見てもメロンソーダだなぁ」
それを聞いて、流来は不満そうな顔をする。
「祐輔には、きっと一生女の魅力なんてわかんないんだよ」
……一生、女の魅力なんかわからない……
祐輔は、流来の言葉に妙に納得する。
『俺は女嫌い』
そう思っていた。そのときまでは……。
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