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その夜も祐輔は、日真理に会うために草むらの道を歩く。
散々酷い目に合わされながら何故そうするのか、祐輔自身にもよく分からない。
でも日真理の前では、不思議と心が曝け出せるのだ。
祐輔はふと空を見上げる。雲が全ての星々を覆いつくし、月はその片鱗さえも見せなかった。
日真理はいつものように煉瓦に背中を埋めていたが、祐輔の姿を見つけると、珍しく自分から歩み寄ってきた。
「日曜のこと、どうなった?」
「それが……」
「え? まさか無理なんて言わないよね」
「無理じゃないけど」
「よかった」
「だけど。友達がダブルデートしたいって言うんだ」
「ダブルデート?」
「俺の友達とその彼女と、四人でデートをしたいって」
「いいよ」
思いがけずあっさりとダブルデートを承諾する日真理。その瞳はいつものように鋭く光っていた。
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