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◇◇◇
雨上がりの朝は眩しい。
雨が埃や塵を洗い流し、清水のようになった空気の中を、西に向かって自転車のペダルを踏む。
祐輔はすがすがしい気持ちで町の図書館の入り口をくぐった。
図書館は涼を求める人々でにぎわっていた。
祐輔は書棚を巡り幽霊に関する本を探す。そして、それに関する本が少ないことに驚いた。祐輔は辛うじて二冊の本を見つけ出すと、窓際の明るいベンチに腰を下ろす。
眩しいほどの日の光が、一枚のレースカーテン通すと、乳白色を帯びた柔らかな光に変化した。
空調で小さく揺れるカーテンとともに、影も祐輔の足元でアラベスクを描く。
『未練や怨恨により、死者の魂がこの世に残り、その姿を現したもの』
『霊体は、それを見たり感じたりする人に言葉や思いを伝えることはあるが、直接人に触れて動かすことはない』<幽霊全書>
(やっぱり。幽霊は人の髪の毛を掴めない)
祐輔は図書館の書籍検索で、他の本を探してみる。
幽霊についての本は他にも三冊あったが、いずれも貸し出し中になっていた。
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