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   仕方なくこれらの本について係員に尋ねると、「普段はこんなにまとめて貸し出されることはないのですが、なぜか今は出っぱなしです」と困った顔をして答えた。  祐輔はベンチに戻ろうとしてふと足を止める。  そして書棚の影にあわてて身を隠した。 「いろいろ調べてみたんだが、納得できる答えは見つからねぇ」  心臓に響く声。久我(くが) (たける)だ。 「でも、間違いなく消えたんだぜ」  久我の前に立つ二十歳前後の男が言った。 「確かに消えたように見えた。でも本当に消えたのかどうか、俺にはよくわからねぇ」   久我は、組んでいた腕を解くと、ベンチに置いてある本を開く。 「ここ、読んでみろ」  若い男と、小太りの男がベンチに座ると本を覗き込む。 「幽霊じゃないってことですか」 「かもしれねぇってことだ」 .
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