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日真理は、目を開けると巻き藁から指を抜いた。そして薬指を祐輔の鼻先に持ってくる。
「お前。どんな願い事をした?」と日真理が訊いた。
黙っていたら、そのまま眉間を突き通されそうな勢いだ。
「ばらしたら効き目がなくなるんだろ?」
祐輔は困った顔をして日真理を見返す。
「どうせ、祐輔の願い事なんか叶うわけないし」
日真理は意地悪そうな目で祐輔を見るとぷいと横を向く。
日は暮れているが、参道沿いは七夕飾りと夜店で眩いばかりの賑わいだ。
二人は互いの願い事を知らぬまま、神社に向かって歩き出した。
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