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「こっちだよ」
祐輔は日真理を脇道へと誘う。
「へぇ。こんなところに道あるんだ」
日真理は足を取られないよう下を見て歩いている。薄暗いが、参道の明かりに照らされて何とか道の行方を確認できた。
「ほら、あそこ」
祐輔に促され日真理が顔を上げる。
そこには大きな銀杏の木が立っていた。さながら闇の中にむっくりと体を起こしたうわばみのよう。
「きゃ。恐い」
日真理が祐輔にしがみつく。
「何だ。日真理でも恐いものがあるのか」
そういうと祐輔は大きな声で笑った。
「おおい。祐輔」
うわばみの根っこのあたりから流来の声が聞こえてくる。
「今行くから」
「日真理さんも一緒?」
「うん」
それを聞いた日真理は、頭の上に乗っている狐の面で顔を覆った。
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