002

10/16
前へ
/275ページ
次へ
  「こっちだよ」  祐輔は日真理を脇道へと誘う。 「へぇ。こんなところに道あるんだ」  日真理は足を取られないよう下を見て歩いている。薄暗いが、参道の明かりに照らされて何とか道の行方を確認できた。 「ほら、あそこ」  祐輔に促され日真理が顔を上げる。  そこには大きな銀杏の木が立っていた。さながら闇の中にむっくりと体を起こしたうわばみのよう。 「きゃ。恐い」  日真理が祐輔にしがみつく。 「何だ。日真理でも恐いものがあるのか」  そういうと祐輔は大きな声で笑った。 「おおい。祐輔」  うわばみの根っこのあたりから流来の声が聞こえてくる。 「今行くから」 「日真理さんも一緒?」 「うん」  それを聞いた日真理は、頭の上に乗っている狐の面で顔を覆った。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6532人が本棚に入れています
本棚に追加