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流来は、すぐに大ダコ入りのたこ焼きを一口で頬張った。よく火傷しないものだと祐輔は思う。
「なあ。日真理はどうする?」
面をかぶった日真理を気遣って祐輔が声をかける。
「私はいらないから、祐輔が食べて」
日真理はたこ焼きのパックを祐輔の方に押しやる。
「願い事叶うといいな」
日真理が呟いた。
参道から届く光を浴びて、狐の面が物悲しげに浮き上がって見える。
「お前。泣いてるの」
祐輔には、面の下に隠れた日真理の頬を涙が伝っているように思えた。
「牛乳うどんのバカ。目にごみが入ったんだ」
日真理はお面を少し持ち上げるとハンカチで目を拭う。そのとき、東の夜空に花火が上がった。
「わあ、綺麗」
爽がうっとりとした目で見上げる。
「巻き藁が奉納されるぞ」
流来は口元についたたこ焼きのタレを指で拭い取りながら言う。
「よし。見に行こう!」
流来の声に弾かれるように四人は立ち上がった。
巻き藁の周りには、大勢の人が集まっていた。
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