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「おい日真理」
祐輔は慌てて声をかけるが、返事が返ってこない。
「ごめん。日真理さん、ちょっと調子が悪いみたいだから、俺たち帰るよ」
祐輔は流来たちにそう告げると、学校への道を急いだ。
途中で日真理は「もう歩けない」と言う。祐輔は日真理の体を背負う。まるで綿菓子を背負っているように軽い。
「なあ日真理。お前って……」
祐輔は『幽霊じゃないよな』という言葉を飲み込んだ。
……
やっとのことで校門にたどり着いた祐輔は、背中の日真理を下ろそうとする。しかし、そこに日真理はいなかった。
背中から金魚柄の団扇がゆらゆらと土の上に落ちる。
祐輔は呆然とそこに立ち尽くした。
……
「おい。やっぱり消えただろ」
低く響く声。久我だ。祐輔は震え上がる。喉が詰まって声が出ない。
「何びびってんだ。俺は何もしねぇぜ」
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