002

15/16
前へ
/275ページ
次へ
  「おい日真理」  祐輔は慌てて声をかけるが、返事が返ってこない。 「ごめん。日真理さん、ちょっと調子が悪いみたいだから、俺たち帰るよ」  祐輔は流来たちにそう告げると、学校への道を急いだ。  途中で日真理は「もう歩けない」と言う。祐輔は日真理の体を背負う。まるで綿菓子を背負っているように軽い。 「なあ日真理。お前って……」  祐輔は『幽霊じゃないよな』という言葉を飲み込んだ。  ……  やっとのことで校門にたどり着いた祐輔は、背中の日真理を下ろそうとする。しかし、そこに日真理はいなかった。  背中から金魚柄の団扇がゆらゆらと土の上に落ちる。  祐輔は呆然とそこに立ち尽くした。  …… 「おい。やっぱり消えただろ」  低く響く声。久我だ。祐輔は震え上がる。喉が詰まって声が出ない。 「何びびってんだ。俺は何もしねぇぜ」 . 
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6531人が本棚に入れています
本棚に追加