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「ああ。いいよ」
「じゃあ、こことここね」
日真理はそう言いながら、地図上の二カ所を指し示す。
『奥垂水の滝』と、『狐鳴神社』
パンフレットには、涼しそうな滝と、古風な社が写っていた。
清流から山に向かって、三十分くらい分け入ったところに奥垂水の滝はある。周囲は深緑に囲まれていて、ひんやりとした空気に包まれていた。
岩肌にぶつかりながら落ちてくる滝が細かい飛沫を散らし、滝床を煙らせている。そこにいるだけでティーシャツがじっとりと濡れるほどの飛沫。風が吹くと、寒いくらいだ。
日真理は、靴と靴下を脱いで滝壺に入る。
「ひゃ。冷たい」
日真理は両手で水をすくうと、祐輔めがけてかけてきた。
「おい、冷たいだろ」
「そんなところに突っ立てないで、牛乳うどんも入れ」
「何言ってるんだよ。子どもじゃあるまいし」
「何もしないよりは、何かをした方が楽しいわよ。それに『うどん』は冷たい水で締めた方が美味しいでしょ」
「バーカ」
祐輔は、怒って滝壺に入ると水を日真理に浴びせかけた。
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