004

13/17
前へ
/275ページ
次へ
   日真理と祐輔は、真っ赤な鳥居に歩み寄った。鳥居は、山の尾根から切れ目なく連なり、さらに森の奥へと続いている。 「ほら。ここ(くぐ)るよ」  日真理はそう言うと、祐輔の腕を両手で抱き寄せる。日真理の胸が祐輔の上腕に密着した。柔らかい乳房の感触。心地よい匂い。祐輔は体の奥底からわき上がる熱いものを感じた。  ゆっくりと最初の鳥居をくぐるとそこは別世界。合わせ鏡の中のように奥深くまで赤い鳥居が続いている。鳥居と鳥居の間から、連続シャッターを切るようにまぶしい陽光が差し込んだ。 「まるで不思議の国だな」 「違うよ。狐鳴神社」  真っ赤な鳥居のトンネルは、よく見ると他の場所にもあって、迷路のように入り組んでいる。 「日真理。手放すなよ、迷子になりそうだ」  日真理はそう言う祐輔の顔を見てにっこりと笑う。ところが突然舌を出すと、手を振り解いて駆け出した。 .
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6532人が本棚に入れています
本棚に追加