6532人が本棚に入れています
本棚に追加
日真理と祐輔は、真っ赤な鳥居に歩み寄った。鳥居は、山の尾根から切れ目なく連なり、さらに森の奥へと続いている。
「ほら。ここ潜るよ」
日真理はそう言うと、祐輔の腕を両手で抱き寄せる。日真理の胸が祐輔の上腕に密着した。柔らかい乳房の感触。心地よい匂い。祐輔は体の奥底からわき上がる熱いものを感じた。
ゆっくりと最初の鳥居をくぐるとそこは別世界。合わせ鏡の中のように奥深くまで赤い鳥居が続いている。鳥居と鳥居の間から、連続シャッターを切るようにまぶしい陽光が差し込んだ。
「まるで不思議の国だな」
「違うよ。狐鳴神社」
真っ赤な鳥居のトンネルは、よく見ると他の場所にもあって、迷路のように入り組んでいる。
「日真理。手放すなよ、迷子になりそうだ」
日真理はそう言う祐輔の顔を見てにっこりと笑う。ところが突然舌を出すと、手を振り解いて駆け出した。
.
最初のコメントを投稿しよう!