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「名前……は……?」
祐輔はやっとのことで口を開く。
「俺は、久我 猛。なあ、にいちゃん。ついて来い」
祐輔の下の袋が縮み上がった。そして、昨日の夜の出来事を恨めしく思った。
(日真理……あの少女のせい。あいつが突然俺のこと言い出したから)
「早くしろ」
祐輔は、久我に脅されながら北棟に連れて行かれた。
三階の美術室。久我が扉を開ける。いつの間に雨が上がったのだろう。オレンジ色の夕陽が、斜めに差し込んでいた。その目映い光を浴びて一人の少女が立っている。
「猛。ありがとう」
芯のある声。右腕に包帯が巻かれている。
「約束は果たしたからょ」
久我は不敵な笑みを浮かべ、美術室を出て行った。祐輔は教室の入り口で立ち尽くす。少女は、祐輔に視線を向けた。
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