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「絶対にこっち見るなよ」
「わかった、見ないよ」
祐輔は仕方なく岩と岩の隙間に身を埋める。
「まだ見てる」
「見てないよ」
「嘘でしょ。視線感じるし」
「本当に見てないって」
「見てないって約束できる?」
「約束するよ」
祐輔は長く息を吐いて目を瞑る。それきり、日真理の声が聞こえなくなった。聞こえるのは、源泉が流れ落ちる音と小川のせせらぎだけ。祐輔は目を瞑ったまま日真理の気配を探す。七夕の夜のように消えてしまったらと不安になったから。
しばらく待っても日真理の声は聞こえてこない。
「日真理。いる?」
返事は返ってこない。
不安が増したからだろうか。源泉と小川の音がうるさく聞こえた。
「日真理。もう先に出たの?」
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