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祐輔は我慢できずに、瞑っていた目をうっすらと開けた。同時に驚いて体を後ろにのけぞらせる。その勢いで頭の後ろをゴツンと岩にぶつけてしまった。
目の前に日真理の顔があったからだ。日真理は、祐輔の目をじっと見詰めていた。
「日真理。おま……」
「頭、大丈夫だった?」
日真理は岩にぶつかった祐輔の頭を心配そうに覗き込む。
「バカ、お前。接近しすぎ」
しかし日真理は、そんな祐輔の言葉をよそに、頭を胸で抱え込むようにして後頭部を覗き込んだ。
「血が滲んでる。お風呂出ようよ」
日真理は、恥じらいもなく祐輔の鼻先に膨らんだ胸を押しつけた。祐輔の鼻と頬に日真理の胸が押しつけられる。祐輔は逃げ場のない岩の隙間で日真理の体を受け止める格好になった。
「バカやろう。お前それでも女かよ」
そんな祐輔の声は日真理に届かない。
頭を擦りむいただけ。明日の命がないかも知れない日真理に比べたら、自分の怪我など虫さされみたいなものだと、祐輔は思った。
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