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祐輔は、女性の滑らかな胸に圧迫される興奮で、全身が焼け付くように痛んだ。辛うじて顔を横に向け、日真理の体を逸らすと、目の前を淡い緑の光が行き過ぎる。
「あ、日真理。ホタル」
「え? どこに」
日真理は祐輔に体をあずけたまま後ろをふり返る。しかしそこにはホタルはいない。祐輔の霞んでいた視野がやっと焦点を結ぶ。
「ほら。日真理の腕の上にとまってる」
「え? あ」
日真理は、少し驚いたような顔をし、左手でホタルを覆うと背中を祐輔に向けた。祐輔は岩の隙間から出て、日真理の前に回り込んだ。ホタルは、日真理の左手の下でほのかな光を放っている。
「日真理。それって……ホタルじゃないよね」
日真理は小さく頷くと、二の腕を覆っている左の手を外した。そして細い右腕を祐輔の前に差し出す。日真理の透き通るような腕に浮かんだ、淡い緑色の光。深い夕闇の中に浮かんだ小さな丸い光は妖気を帯びていた。
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