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「お前が古沢祐輔? さえないわね」
日真理が言った。黙っていると、日真理がたたみかけるように言った。
「背は高くないし、顔だって十人前。おまけに肝っ玉は小さい」
日真理の飴色の瞳が、祐輔の眼を刺す。祐輔は視線を落とした。
「これだけ言われて悔しくないの? 何黙ってるのよ」
祐輔がやっと視線を上げると、日真理の張りのある顔が呆れ顔に変わっていた。
「黙っててもいいから、これだけはちゃんと聞いて」
日真理が祐輔に詰め寄る。
「お前は今日から私の彼氏だから! シャンとしないと金玉蹴り上げるわよ」
声高なくせにドスが利いている。
「ちょ。ちょっと待って。何で俺が彼氏?」
「いちいち訊くな。そう決まってるんだから」
日真理は、不満そうに口を曲げた。
「今会ったばかりなんだぞ」
「『つきあってください』って言いなさい!」
「無茶苦茶だな。お前……」
祐輔は日真理の目を見るが、相手の凄みに気負けしてしまう。
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