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◇◇◇
「よ。ゴーヤバーガー」
「よ。牛乳うどん」
草原から、コオロギとスズムシの鳴き声が聞こえる。日真理は煉瓦から背中を浮かせると、ゆっくり祐輔に歩み寄った。
「俺さ。日真理にいっぱい質問があるんだけど」
星々の間を月の光を受けた積雲が流れていく。
「何?」
「日真理ってさ、わかんないことだらけ。訳わかんないと付き合う気なくなるし」
祐輔の言葉を聞いて日真理の表情がくもる。
「何バカなこと言ってるの」
「俺はバカなことなんか言ってないぞ。どうしてお前、突然消えちゃうんだよ。どうして流来たちに顔見せないんだよ。本当にあと一月で……死んじゃうのか」
日真理は、視線を下に向けるると、「どうしても言わないとだめ?」と言い、上目遣いで祐輔を見た。
「ああ、だめだ。言わなきゃもう日真理の彼氏やめるからな」
力なく口をすぼめる日真理。いつもの威勢のよさが掻き消え、ゴマ粒みたいに小さくなった。
ところが、そんな日真理の憂いは一瞬で消え失せる。そしていつも悪戯っぽい光が戻った。祐輔はあっという間に肩に乗せた手を振り払われ、髪の毛を掴まれる。
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