いちごミルク色のパンジー

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誰か来てるの? と、訊ねる声に、聞き覚えはない気がした。 “ただいま”“おかえり”と言うからには、彼もまた、ここの住人? 慌てて元の椅子に座った私は、こんな知らない人の中に置いていったお兄ちゃんに、心の中で悪態を吐いた。 “雅”と彼は、絡まるように身を寄せたまま、部屋に入ってきた。 「ああ、ほんとだ」 妹ちゃんだ、と、私を見た彼を、やっぱり知らない、と思う。 「……こんにちは」 お邪魔してます、と言うべき?私は妹、彼は他人。 でもここに住んでるみたいだし、やっぱり私が折れるべき? 悩んだせいで、テンポの遅れた私を、面白そうに見る彼から、思わず目を逸らした。 久しぶりだね、と笑むけれど、私、知らないもん。 .
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