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「ごめん、名前、なんだっけ」
ささくれ立つ私をのぞき込むように訊いた“タカノ”は本当に、私の髪にピンクの花を、挿した。
「………深雪」
「ああ!そうだ、深雪ちゃんだった」
ごめんね、前に会った時は泣かしそうになったっけね、と。
一応はわかってたんだ?
「そんな事より…由紀って?」
訊きたいような。
訊きたくないような。
タカノは一瞬、目を見開いてから、何を思うのか、しばらく私の目を覗いていた。
「…由紀さんは…………」
真面目な顔で、タカノは口を開いた。
「凱司の…………」
お兄ちゃんの、なに?
お願い、早く言って。
タカノはそこで言葉を切ると、くく、っと笑いをかみ殺した。
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