いちごミルク色のパンジー

9/36

773人が本棚に入れています
本棚に追加
/334ページ
「…鷹野さん、そんなの駄目ですよ」 僅かに、苦笑のような叱責のような。 小さなクリスタルの瓶を持った“雅”が、私の斜向かいに腰を下ろした。 パチンと小さな折り畳みナイフを手に、自分の髪から花を抜き取る。 「…大丈夫。由紀さんは、宇田川さんの奥様ですから」 指先で、不思議なくらい滑らかに、花の茎が切り戻され、クリスタルの水の中に、一本ずつ。 視線が合わないのは、私が逸らしている訳ではなく“雅”が刃先を見つめているせい。 私は、その滑らかなナイフの動きを見つつ、言われた意味を、考えた。 「……なに…よ。…馬鹿にしてるの?」 私は、お兄ちゃんを好きで。 一言も会話をしなかったって言うのに、この子は。 それが兄妹愛なんかじゃないことに、気がついたって言うの? 私が、あんたや、不意に聞こえた女の名前に、嫉妬してる事まで? .
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

773人が本棚に入れています
本棚に追加