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話を戻しにくくなった。
波打つような苛立ちは、行き場を無くし、私は自棄を起こしたように、焼き菓子に手を伸ばした。
綺麗なガラスの器に入ったプリンは“雅”の作ったものだろうと。
食べるのは腹立たしい、と。
それが美味しかったりしたら、居たたまれない、と思って、手を出さずにいたけれど。
だんだん乾いていく表面に、ちょっと可哀想になっていた所だった。
お湯が沸く音がして“雅”は花とナイフを置くと、パタパタとキッチンに戻る。
代わりに座った“タカノ”が、いちごミルク色の花を、つまみ上げた。
「そういう、好きなんだ?」
小さく、視線を花に向けたまま呟かれた問いに、私は、バターの香りのする焼き菓子の端を、黙ってかじった。
「凱司は…受け入れないよ?」
…この人は、私の何を知っていて、こんな事を言うんだろう。
お兄ちゃんの何を知っていて、今、言うの?
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