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「それから、雅ちゃんは凱司と付き合ってるわけじゃないからさ、八つ当たり、しないでくれる?」
「……………」
なによ、この人。
顔ばかり綺麗で、中身最悪!
私は焼き菓子を大きくかじる。
しっとりとした口当たりと、バターの香り。
甘味、塩味。
「そういう好き、なら、ツラいと思うよ」
付き合ってなくても、凱司は雅ちゃんを可愛がるし。
俺のなのにさ。
後半を口の中で呟いた“タカノ”は、ちらりと私を見ると、いちいち八つ当たりされたんじゃ、困るから、と。
一瞬、私の知っている“タカノ”の目を、向けた。
「…猫被り」
「深雪ちゃんも被っといた方がいいよ」
凱司に怒られるよ。
そう、クスクスと笑った“タカノ”は、残った花を水に差し、私の髪からも、花を抜き取った。
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