クルミと砂糖と干し葡萄

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「お兄ちゃんナンパ!ナンパ男が浮き輪取った!!」 「…ナンパぁ?」 ビールの缶を傍らに置いたお兄ちゃんは、サングラスを掛けていて。 さっきのナンパ男とは比べようも無いほどにカッコいい。 「どいつだ」 「あれ!あの悪趣味な黄緑色の水着の!」 別に、怖かった訳ではない。 怖いわけではなかったんだけど、とりあえずはあのナンパ男に“ひとりじゃない”事を証明したかった。 途中まで浮き輪を持ったまま追ってきていたナンパ男は、お兄ちゃんを見て、足を止めた。 当たり前よね。 お兄ちゃん、怖いもの。 すがりつくように抱き付いた私の肩を抱えて、真っ直ぐに見据えられたナンパ男は、浮き輪を投げ捨てるように放すと、へらへらと気まずそうな笑顔を、浮かべた。 .
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